コンテンツマーケティングの反面教師「医療系サイトWelq」の騒動から学べること

コンテンツマーケティングで着実に成果を上げて行くには、肝心のコンテンツ内容のクオリティを重視することが大事です。早期に成果を出したいと考えるあまり「質より量」にとらわれてしまうと、2016年秋に表面化した医療系サイトWelqを中心に巻き起こった炎上・閉鎖騒動の二の舞になる恐れがあります。コンテンツマーケティングを成功に導くにはWelqを反面教師として、良質なコンテンツに必要な要素を知っておかなくてはなりません。コンテンツのテーマや分野によっては、マーケティング戦略に活かせるかどうか事前によく考えておく必要もあります。

【医療系サイトWelq騒動の背景とSEO対策】

医療系サイトWelq騒動は、コンテンツマーケティングの重要性に気付いた多くの企業が本格的に導入するようになり、効果を上げ始めたところも増えていた2016年に持ち上がりました。当初は主にSNS上でWelqに掲載されている記事の信ぴょう性を問う声や盗用問題などが騒がれるようになり、ついには新聞やテレビといったメディアの間でも取り沙汰され、Welqを運営していた企業が公式に謝罪しサイトを閉鎖するに至っています。医療系サイトを標榜しながらもWelqに掲載されていた記事の大半は医療関係者などの専門家ではなく一般のライターだったことが判明し、しかもその多くがクラウドソーシングを通じて集められた人々で、医療のプロはほぼ皆無の状態だったことが明らかにされました。Welqの運営企業は当初、記事内容に関して完全にライター任せにしていたと発表していましたが、実際はSEO対策に関して細かく指示する内容のマニュアルを作成してライターに見せ、それに則った記事を作成するよう依頼していたことも判明し、運営企業がコンテンツのクオリティよりも検索で上位に上がることを重視していた実態も露見するに至りました。そもそもWelq騒動の発端はSEO対策に詳しい専門家らがWelqの圧倒的なSEO対策強化ぶりに驚嘆して話題となったためと言われています。当時、医療関係のキーワードで検索を行うと、結果上位に表示されるのはことごくWelqの記事だったため、それらを読んだ幾人もの人が内容に疑問を持ち、やがて専門医や薬剤師などプロの間でも問題視されるようになって、運営の謝罪とWelq休止で幕引きとなりました。

【コンテンツへのSEO対策強化は諸刃の剣】

SEO対策の専門家らに不審がられるほどの万全さでSEO対策を徹底していたWelqの記事は、コンテンツマーケティングにおけるSEO対策強化は諸刃の剣であることを物語っています。徹底したSEO対策によって検索結果の上位として表示され、多くの人が閲覧し記事を熟読したことで内容に関しての疑問が取り沙汰されるようになり、ついには大きな社会問題となって、運営企業に利益をもたらすどころか大変な損失を与えました。金銭的な損失よりもダメージが大きいイメージダウンと信頼の喪失という企業の屋台骨を揺るがす事態を招き、Welqという名称は現在もインターネット上で暗い影を落とし続けています。Welq騒動以降、ネットの記事は嘘ばかりと見なされるようになったことは、良質なコンテンツを世に送り出し続けてきた人々をも落胆させることになりました。コンテンツマーケティングを成功させるにはコンテンツ自体が多くの人の目に留まらなければ意味がなく、検索結果の上位にならなければ閲覧すらしてもらえないのは事実です。しかしながら、そのためのSEO対策強化が裏目に出ると単なる失敗では済まされないことが、Welq騒動からは痛烈に伝わってきます。SEO対策を強化すれば確かに検索結果上位となり、多数の人々から閲覧してもらえるようになりますが、肝心のコンテンツの質が悪ければ読み手を落胆させ、内容によっては反感や怒りをかき立てるものとなって企業イメージを傷つけます。Welqの場合は人の健康や生命に直接かかわってくる医療系コンテンツだったために社会問題にまで発展しましたが、万が一の際には命取りにもなりかねない事態を招くのはどの企業とて同じことです。

【量よりも質が最重要となるコンテンツ】

理想的なコンテンツマーケティングによって企業のファンを増やし収益につなげて行きたいと考えて、多くの企業が対策を行っています。ただし、魅力的なコンテンツで閲覧者を魅了し将来の顧客を育てるという手法だけに、開始後ほどなく実利に直結させることはほぼ困難です。早期に結果を出すことを求めるタイプの業種にはコンテンツマーケティングという手法自体あまり向いていない面があり、気軽に手を出して拙速に結果を求めた場合、Welqのような事態を招かないとも限りません。質の良いコンテンツを作成するという以前に、テーマや全体のアウトラインを明確にしておく必要があり、業種や題材によってはおいそれと手を出さないほうが無難な分野があることを肝に銘じる必要もあります。一連のWelq騒動が社会問題にまで発展したのは、人の生命にもかかわる医療系分野だったことが大きな理由の一つで、各分野の専門医などの監修を受ける体制を整えることすら怠って、コンテンツの肝である記事を外注によって大量生産したためです。健康や医療のような分野はもちろん人権や宗教、法律問題など専門家でなければ執筆が難しく、デリケートな問題もはらむ分野のコンテンツは一歩間違うと炎上騒ぎを引き起こす恐れがあるため、業務内容と関連がある分野であってもマーケティング戦略には活用しにくい面があります。分野やテーマによっては方向転換が必要で、場合によってはコンテンツマーケティングそのものにこだわらず、抜本的な戦略の練り直しも視野に入れておくべきです。

【質の良いコンテンツ作成に必要な準備】

効果的なコンテンツマーケティングを実践して行くためには、何よりも良質なコンテンツを作成することが重要になってきますが、そのためには今一度Welq騒動を振り返って反面教師にする必要があります。閲覧数が稼げそうだからと自社の手に余るような困難な分野やテーマを選ぶことや、SEO対策ばかり重視して記事の質が二の次になるような愚は犯さないことが大事で、開始前に戦略の方向性を徹底しておかなければなりません。テーマに基づいてコンセプトをはっきりさせることや、大まかな枠組みなどは外注に任せず、社内において責任者が決定することを徹底しましょう。記事そのものは外部に発注するにしてもクラウドソーシングを利用して不特定多数のライターに任せるのではなく、プロに依頼することを基本にして、その上でコピペ判定や著作権問題などのチェックも丸投げしないことが重要です。海外サイトからの盗用も防ぐため、語学力を持った専任者が必要になることもあり、実際に始動する以前に万全の体制を整えておく必要もあります。気になるSEO対策ですが、そこにばかりとらわれたことで一連のWelq騒動が起こったことを念頭に置いて、SEO対策第一のコンテンツ作成は避けるべきです。必要なキーワードをちりばめてコンテンツの閲覧率を高めたものの、検索して記事にたどり着いた人が中身が薄くためにならない文章だったと落胆した場合のマイナス面のほうこそ考慮しなくてはならず、記事内容の精査と検証もおろそかにできません。読み手のことを考えた自然な文章であることが何よりも大切です。

Welqは医療系サイトだったからこそ社会問題となったと他人事にせず、コンテンツマーケティングに乗り出したばかりの企業や、軌道修正を考えている企業においては、問題の根幹を見据えて反面教師にして、自社の戦略を検証し直す材料にすべきです。コンテンツマーケティングのメリットばかりに目を向けてやみくもに前進するのはリスクを招く恐れもあり、一歩間違うと不利益を生み出しかねない側面まであることも冷静に見据えておかなくてはなりません。良質なコンテンツは一朝一夕には生み出せず、周到な準備と正しい理念に則って地道に進めてこそ得られるものと心得る必要もあります。

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