コンテンツマーケティングの定義は一様ではない部分もあるので、一概には言えませんがコンテンツマーケティングの発祥はアメリカとされています。現在においても新しいマーケティングの手法がアメリカから誕生することは珍しくありませんが、コンテンツマーケティングにおいてもそれは同様でした。コンテンツマーケティングの歴史を知ることでこれからのマーケティングのヒントになることが見つかるかもしれません。どうすれば有効なマーケティングを行うことが出来るのか、売り上げを上昇させるチャンスはどこにあるのか、コンテンツマーケティングの歴史にはそれらへのヒントが詰まっています。
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コンテンツマーケティングを初めて行ったのはアメリカの農機具メーカーである「Deere&Company」であるとされています。この農具メーカーは雑誌にて最新の農業技術や成功するための秘訣など、宣伝ではなく純粋な情報提供を行いました。それまでも自らの製品を知らしめるためや購入の手段を増やすために雑誌を刊行するというケースはありましたが、そういった内容ではなく純粋に知識を得てもらうための雑誌を刊行したのは画期的なことでした。この雑誌を見ることによって農家の方々は農業についてのお得な知識を得ることが出来たため、どんどん話題になっていきました。それだけではありません。雑誌が知られていく中でDeere&Companyという企業、そこから生産されている農機具も有名になりました。直接的な広告ではなく、有意義なコンテンツを提供することによって実際の売り上げに繋げていくという典型的なコンテンツマーケティングの成功例となっています。今でもこの雑誌は刊行されており、150万人もの農家に読まれているほどの人気があります。この雑誌が最初に刊行されたのは1800年代なので今のようにアメリカが経済大国としての地位を完全に築き上げる前のことです。いち早くコンテンツマーケティングにあたるような手法を用いることが出来たことは、その後のアメリカや世界の経済に多大な良い影響を及ぼすことになります。
アメリカにあるお菓子メーカーのジェロはいかにして自社のお菓子を売り込もう考えていました。時は1904年、アメリカは経済成長の真っ最中です。しかし、アメリカにはお菓子は自分の家で作るという文化があり、ジェロのこだわったお菓子が知られるまでには時間がかかると思われていました。そこでジェロは自社のお菓子を使用したレシピ本を無料で配布することに決めます。当時はインターネットもないので今のようにネット上で公開というわけにはいきません。レシピ本を無料で配布するということはそれなりにコストのかかる大きな決断でした。その結果は見事大成功となり、ジェロは2年間で100万ドルをも売り上げを増加させました。ジェロが配布したレシピ本の内容は非常に簡単であり、幅広い方々が有効に使えるものになっていたのが大きなポイントです。また、ジェロのお菓子はリーズナブルな価格のものが多く、気軽にレシピを試してみることが出来ました。まだコンテンツマーケティングの研究や調査が進められていない時代でしたが、ジェロの行ったコンテンツマーケティングは要点を押さえていたといえます。現代ではレシピをパッケージに記載したり、インターネット上で公開したりすることは一般的になっていますが、その祖となるアイデアはジェロが生み出しました。このようにコンテンツマーケティングは先んじてアイデアを生み出すことが非常に重要となっています。
1922年のアメリカにてついにメディアを使ったコンテンツマーケティングが誕生します。そのメディアとは当時の人々にとって1つのエンターテインメントでもあったラジオでした。アメリカの大手スーパーのSearsは農家の人と自社の関係をより良くするためにラジオ番組を立ち上げました。その内容は農家の方にとっての有意義な情報の発信や政府の抱えている問題の解明など、自社の宣伝の内容を含まないものです。このラジオで放送されていた情報はアメリカに住んでいる方にとって非常に有意義であったため、農家の方のみならず幅広い方が聴くことになりました。これにより、Searsの知名度も向上し売り上げが上がったとされています。1930年になると世界恐慌の影響で訪れたデフレに対しての情報を発信しました。現代ではテレビがあるのでインフレやデフレといったことは一般に知られていますが、当時ではそれらについて知ることが出来る貴重な機会だったといわれています。このコンテンツマーケティングの優秀なところは時代に合わせて柔軟に変化させていったところです。初期は政府の問題を扱いつつ、その後は経済の内容に切り替えていきました。その結果、飽きさせることなく有効なマーケティングを続けられたと考えられます。詳しい情報は残っていませんが、何らかの形で人々の関心を調査していた可能性もあります。まさに今に通ずるコンテンツマーケティングの成功例といえるでしょう。
1930年にアメリカでP&Gがラジオの連続ドラマに進出しました。今でこそ、各企業がドラマのスポンサーとなることは珍しくありませんが、当時としては洗剤メーカーが直接的には関係のないドラマに進出することは斬新なことでした。洗剤メーカーは洗剤の優秀な点をアピールすることの方が売り上げにつながると思われていたからです。しかし、洗剤を作っている企業は多く、いかに自社の製品をアピールしたところでどこも同じような印象を持たれてしまうケースが多くありました。そこでP&Gはドラマという舞台に進出し、自社の製品にリアリティのある生活のイメージを植え付けようと考案したということです。当時のラジオスターが数多く登場するラジオドラマは瞬く間に人気となり、P&Gの名もどんどんと知られていきました。このP&Gのコンテンツマーケティング戦略のポイントになっているのがドラマのジャンルです。P&Gは自社が洗剤という日用品を扱っている企業であることから、メロドラマへの進出を行いました。これにより、洗剤とドラマという一見異なるものが何気ない日常という舞台でイメージが重なり、売り上げを伸ばすことに繋がったということです。P&Gは現在においても数多くのドラマのスポンサーを務めています。このように自社の製品とコンテンツをいかにして結びつけるかは非常に重要です。どれほど注目を集めたとしても関連が薄ければ売り上げに影響しにくくなってしまいます。P&Gの判断は見事でした。
いかがでしたでしょうか。意外にも現代的なコンテンツマーケティングが50年以上も前から行われていました。こうして見ると成功ばかりのようにも思えますが、実際にはこれらの陰で失敗してしまったものもあります。これからのコンテンツマーケティングを考えるうえで歴史は非常に参考になります。いずれの時代においても過度に自社の製品をアピールするのではなく、顧客の求めていることを満たすことで自社や商品に自然と興味を持ってもらえるようなコンテンツマーケティングが有効です。また、そこがこのマーケティング手法の面白さでもあります。