「現代のマーケティングは、どれだけ顧客の深層心理に迫れるかの勝負だ」
これは「現代マーケティングの父」フィリップ・コトラーの言葉である。コンテンツマーケティングにおいて、良いコンテンツとは「ユーザーに最高の価値を届ける」コンテンツである。そこで、いかに深層心理に迫り、潜在的なニーズを把握するかがカギになる。
検索エンジンで上位表示されるものが「良いコンテンツ」なのだろうか。売上向上に貢献したページが「良いコンテンツ」なのかだろうか。売上につながらずとも、社会的に価値のあるページが「良いコンテンツ」なのだろうか。
これらの問いに対して明確な答えを出せるだろうか。このページを一読した後、ここに戻って答えてみてほしい。
具体的にイメージが湧かないという方のために、良いコンテンツの条件を三つ挙げておこう。
①ユーザーの求める情報を届けている
②ユーザーが読みやすいように体系立てられている
③SEOコピーライティングが施されている
本文ではこれらの条件について詳しく解説する。
コンテンツマーケティングを始めたが、どうすれば良いコンテンツを作れるのかお悩みの方には、私が書いた「良いコンテンツ」(本ページ)をぜひ読んでいただきたい。この記事では、「ユーザーに最高の価値を届ける」コンテンツが、具体的にどのようなものを指すのかについて、成功事例にも触れながら説明する。
読者の皆さんには「良いコンテンツ」に対する理解を深め、この記事を元に、良質なコンテンツ作りを実践してほしい。「良いコンテンツ」を知ることで、コンテンツマーケティングの本質を理解し、ビジネスの大きな成功につなげることができるはずだ。
Contents
1.「良いコンテンツ」の三つの条件
先程も触れた「良いコンテンツ」の三つの条件それぞれについて詳しく説明しよう。
①ユーザーの求める情報を届けている
これは三つの条件の中で最も重要といえる。ユーザーが求める情報というのは、すでに顕在化したニーズではなく、潜在ニーズに応えるものでなければならない。コンテンツ自体は、無料で閲覧できても、それが「有料級」だと思わせることができれば、作成者への信頼につながり、購買に至る可能性が高まる。無料だからと言って、コンテンツに掲載する内容を出し惜しみしてはかえって逆効果になるかもしれない。
マーケティングにおける見込み客は4種類に分けられる。「いますぐ客」「お悩み客」「そのうち客」「まだまだ客」である。PPC広告のような手法では、ニーズとウォンツを両方持った「いますぐ客」にしか効果がなかった。コンテンツマーケティングは、いますぐ購買をしないそのほかの見込み客の潜在的ニーズへアプローチする必要がある。
ユーザーが求める情報を知るためには、表面的な分析では不可能である。価値の高いキーワードを特定し、ペルソナ(最も重要で象徴的なユーザーモデル)を設定する。ここでは、徹底的にユーザー視点に立ち、ユーザー像や検索シチュエーションの特定に注力する。ペルソナの設定の際には、⑴立場⑵価値観⑶問題⑷トリガーといった要素を押さえる必要がある。各コンテンツによって、ペルソナがどうなることを目指すかというゴールを先に描き、制作のプランを決めていく。
コンテンツマーケティングで成功するためには、上位表示のために必要なテクニックだけではなく、ユーザーの幸福を実現するという熱意と覚悟がなければいけない。コンテンツ制作に取り組む前に、「この検索ユーザーはどんなユーザーか」「このユーザーにとって最高の結果は何か」ということを改めて問い直し、突き詰めていく必要がある。
②ユーザーが読みやすいように体系立てられている
「分かりやすさ」は、「良いコンテンツ」には不可欠である。ネット記事は、新聞や雑誌と異なり、縦にスクロールして流し読みされる場合がほとんどだ。そのため、いかにユーザーの読みやすさに配慮しているかは、その記事がしっかり読まれるかどうかに大きく影響する。
最低限文章は、きちんと正しい文法、語彙を用いて書かれていなければいけない。使用する言葉は分かりやすく、ストレートで強い、そして具体的な言葉を選ぶことでユーザーが読みやすい文章にすることができる。
また、文章の中身だけではなく、ページの構成にも気を遣わなければいけない。記事の最初や最後だけを読んでから、全部読むかを決める人も多いだろう。そのため、特に書き出しとまとめの部分に、ユーザーにとって価値のある情報をきちんと入れておくべきだ。「1コンテンツ1キーワード」という原則に従って、キーワードを最初と最後に効果的に配置しよう。
タイトルタグや見出しタグ、リンクやCTA(行動喚起)といった構成のすべてが、ユーザーの満足度向上に寄与しているかどうかを自問自答しながら、コンテンツ作成に取り組むことが重要だ。
③SEOコピーライティングが施されている
ここまでの二つの条件は、ユーザーにフォーカスした条件になっていたが、三つ目の条件は検索エンジン(Google)に正しく評価されるためのものである。Googleでは、「クロウラー」というロボットが、検索順位を決めるために、サイトを巡回し、情報を収集している。SEOコピーライティングとは、クロウラーに、正しくサイトの情報を収集してもらうための技術である。
SEOコピーライティングの技術がなければ、コンテンツが正しく評価されず、マーケティングの成果が十分に発揮されない。ユーザーと検索エンジンにやさしいコンテンツを作るということが、SEOマーケティングの成功の秘訣である。
実際にコンテンツ制作を行う際は、次のSEOコピーライティングの10項目をチェックしよう。
①タイトルにキーワード
②メタディスクリプションは設定
③見出しタグの配置
④見出しタグ内で不自然なキーワードの使い方をしていないか
⑤画像のALTタグ
⑥カテゴリーの設定
⑦パーマリンク
⑧内部リンク
⑨競合コンテンツを上回る
⑩ワードプレスを使う
検索エンジンに正当に評価されるサイトを作るためには、これらの項目すべてに注意する必要がある。これらのテクニックについて、より理解を深めたい方は、以下のサイトを参考にしていただきたい。
(SEO初心者向けマニュアルhttps://lucy.ne.jp/bazubu/category/seo#chapter-4)
ここまで、「良いコンテンツ」の三つの条件を説明してきた。改めて、「良いコンテンツ」の定義は、「ユーザーに最高の価値を届ける」コンテンツである。SEOコピーライティングのようなテクニックは、重要であるが、「ユーザー第一主義」という軸を忘れないことが肝心だ。
ユーザーの幸福を実現するために、記事の執筆後に以下の7項目をぜひ問い直してほしい。
①ターゲットが思わず「自分のことだ!」と思うような問題提起になっているか?
②この記事を読むとユーザーが解決できる問題を明確に伝えられているか?
③ユーザーの問題を解決できる根拠をロジカルに伝えられているか?
④本文内でユーザーが求めている情報を妥協せずに伝えられているか?
⑤見出しを効果的に配置してユーザーにとって見やすい構成になっているか?
⑥読み直してみて分かりにくい箇所がないかチェックしたか?
⑦ライバルサイトのコンテンツと比べて遥かに良いものになっているか?
これらの問いに、自信をもって答えることができれば、あなたの書いた記事が、ユーザーにとって価値のあるコンテンツとなっているに違いない。
2.悪質、低品質、良質なコンテンツの違い
コンテンツが良質であれば、以下のような循環が生まれる。
・ソーシャルメディアで自動的に拡散して短期間でアクセスを集める
・クロウラーが頻繁に回るようになりページが適切に評価される
・SEOで継続的に集客し続けるようになる
コンテンツの質はコンテンツマーケティングの成果に直結することが分かるだろう。良質なコンテンツの定義やその条件について述べてきた。では、逆にどのようなコンテンツは悪質、あるいは低品質と言われてしまうのかを知っておこう。
①本質
・良質なコンテンツ―潜在ニーズの充足
・低品質なコンテンツー顕在ニーズの充足
・悪質なコンテンツー自己欲求の充足
良質なコンテンツは、ユーザーの生活の質を上げるようなものである。まだ、明らかになっていないニーズを的確に分析し、それを満たすようなものでなければならない。
一方、低品質なコンテンツは、既に明らかになっているニーズに応えるコンテンツである。ユーザーニーズに応えるという点では、良質なコンテンツと同じだが、他と違うだけのコンテンツにとどまり、新たな価値を生み出すことはできない。
悪質なコンテンツは、ユーザーのニーズに全く応えない、自己本位なコンテンツである。これは、言うまでもなくユーザーの生活の質を下げることになる。
「良いコンテンツ」を制作するためには、「潜在」ニーズの深堀りをすることが必要不可欠である。良質なコンテンツを作ることは、最も難しい。そして、それゆえに最も価値が高いのだ。
②作成者の視点
・良質なコンテンツーユーザーに最高の価値を届ける
・低品質なコンテンツー顧客に媚びる
・悪質なコンテンツー自社の利益
作成者の視点は、本質の部分を理解していただけたら、分かりやすいだろう。低品質なコンテンツは、顕在ニーズの充足のために、他との差別化を図る。そのために、顧客に媚びるようなコンテンツ制作に陥る。さらに悪いのは、ただ自社の利益のために作られる悪質なコンテンツである。
良質なコンテンツは、時に自社の利益には直接つながらないこともある。例えば、競合他社の商品・サービスを紹介したり、おすすめしたりするような場合である。このようなコンテンツが世に出るのは、「ユーザーに最高の価値を届ける」という視点で、コンテンツ制作に励む人々がいるからだ。結果的に、良質なコンテンツは、多くのアクセスを稼ぎ、ソーシャルメディアで自発的に拡散される。そして、コンテンツ制作に注いだ熱意が、長い目で見れば、会社の利益に還元されるのだ。
③作成動機
・良質なコンテンツー企業価値の向上
・低品質なコンテンツー必要に追われて
・悪質なコンテンツー金儲け
コンテンツの作成動機についても大きな違いがある。悪質なコンテンツは金儲け、自社の利益だけを追求したコンテンツである。このような動機で生み出されたコンテンツに価値はない。
低品質なコンテンツは、必要に迫られて仕方なく作られるものと言える。同じような既存のニーズに応える競合に勝つために、コンテンツを作るしかなかったという状況である。
では、良質なコンテンツは、どのような動機で作成されるのか。それは、企業価値の向上という自発的な動機である。潜在ニーズを捉え、ユーザーに価値を届けるような素晴らしいコンテンツは、仕方なく作るというマインドからは生まれない。自社の利益だけではなく、社会貢献という面も含めて、企業価値を高めていくために制作される。良質なコンテンツは、短期的に拡散されるものではなく、公開後2年たっても反応があるものである。コンテンツを金稼ぎの道具として捉えず、「資産」として真摯に向き合っていく必要がある。
3.「良いコンテンツ」の事例
ここからは、具体的なコンテンツマーケティングの成功事例を見て、「良いコンテンツ」に対する理解を深め、実際に作成し、成果を挙げるイメージを掴もう。
①月間500万PVを達成し、毎月の新規患者数が657%増加した歯医者のブログ
(https://lucy.ne.jp/bazubu/case/okazaki-dental-clinic)
横浜市戸塚区のおかざき歯科クリニックは、コンテンツマーケティングによって、高いPVとCVを獲得することに成功した。当社のブログでは、歯に関する正しい知識を分かりやすく伝えるだけではなく、ユーザーが求めていること以上の知識を提供することを心がけて、コンテンツを世に送り出している。
歯医者としての利益を追求するという目的に縛られず、日本中の悩める人にアプローチしたいという動機によって、世の中の役に立つコンテンツを追求している。コンテンツマーケティングに取り組んだことによって、コンテンツを財産として、オープンな形で残すことができるようになった。「良いコンテンツ」は、全国の多くの人に読まれるため、より責任感が生まれ、自身の診療技術の向上につながったと、院長は語っている。
②1年半で億単位の貢献を果たした学校法人のコンテンツマーケティング
(https://lucy.ne.jp/bazubu/case/kandagaigo)
神田外語学院は、2019年に進路選択や語学学習に役立つ情報を提供するブログを開設した。開設からブログ経由の最終CVを金額換算すると、数億円以上の貢献を果たしている。外国語を使う職業を目指す学生の悩みを、中立的で信頼できる記事で解決することに努めている。高校生の進路に関する情報は、情報の非対称性が大きいが故に、ユーザーに寄り添った愛のある記事を書くことが何よりの社会貢献になる。
学校関係のマーケティングは、ユーザーにとって重要な進路選択に直接かかわるため、PPC広告のようなプッシュ型の手法には向かない。コンテンツマーケティングは、ターゲットとの親和性が高く、自社で質を担保することができるという利点があった。ユーザーのことを徹底的に考え抜いた記事を書くことで、双方の信頼関係を築き上げ、学校としての企業価値向上につながった事例である。
まとめ
この記事では、「良いコンテンツ」について、定義、条件、質の低いコンテンツとの比較、事例について説明してきた。最も重要な定義を、改めて振り返っておこう。
「良いコンテンツ」=「ユーザーに最高の価値を届ける」コンテンツ
コンテンツマーケティングを行う際は、常にこれを肝に銘じておかなければならない。この定義を前提とした上で、「良いコンテンツ」の条件としては以下の三つを挙げた。
①ユーザーの求める情報を届けている
②ユーザーが読みやすいように体系立てられている
③SEOコピーライティングが施されている
ユーザーの幸福を最優先事項として、これらの条件を満たすようにコンテンツ制作をしていれば、自ずと「良いコンテンツ」を世に送り出せるはずだ。「良いコンテンツ」は、会社と社会の財産となり、企業価値を高めるのに大きく貢献することになるだろう。