“The devil is in the details”「悪魔は細部に宿る」
この西洋のことわざをご存じだろうか。これは、一見良さそうなものも、細部に落とし穴があるかもしれない、ということを表す。Webライティングにおいて、基礎的な知識を押さえることは、非常に重要だ。しかし、その段階が一通り終われば、より細かい所にまで気を配る必要が出てくる。
この記事は「記事作成に行き詰っている」「基礎知識は身に付いているから、もう一歩踏み込んだ知識が欲しい」「最近PVが伸び悩んでいる」といった方に向けたヒントになるような内容である。基礎を広くカバーするというより、細部の工夫へのアドバイスをするような内容だと思っていただけると良いだろう。
本文では、以下の7つの項目に分け、それぞれに対して、痒い所に手が届くような17個のアドバイスを送る。
①情報収集 ②構成 ③タイトル ④リード文 ⑤本文 ⑥まとめ ⑦推敲
本記事の内容のうち、あなたがこれまで意識していなかったことがあれば、実践してみると良いだろう。既にあなたが持つ基礎的な知識に加え、このページの要点を押さえることができれば、ライティング中級者に大きく近づくことができるはずだ。細部までこだわったコンテンツを作成することで、さらなるPVとCVを獲得することができるようになるだろう。
Contents
ライティングは、初めから「書く」ことにばかり気を取られてはいけない。まずは、「素材集め」だ。
Webライティングにおける情報収集としては、一次情報の獲得が大事になってくるだろう。一次情報とは、ライター本人が直接得た情報を指す。例えば、自ら行ったインタビューや実際に体験したことが一次情報に当たる。Googleのアルゴリズム上、「専門性」「権威性」「信頼性」が求められる。そのため、確実な一次情報を獲得できれば、正しく評価されやすくなるのだ。
ネット上の記事は、そもそもユーザーにとってみれば、他人の手を介した二次情報である。その情報源が、二次情報だけでは、信頼性に欠ける部分がある。もちろん、内容によっては、一次情報を必要としない、あるいは一次情報が獲得不可能なことがあるだろう。ただ、可能な限り、確かな一次情報をもとにしたコンテンツの作成が望ましいと思われる。
競合サイトからの情報収集も大切だ。質の高いサイトであれば、参考になったり、ヒントを得られたりするだろう。また、自分が作成するサイトを、いかに差別化するかということを考える上でも、競合の分析は欠かせない。
質が高く、上位に表示されているページの共通点を探す。そして、共通点を反映させた記事を書くことで、より効率的に良質なコンテンツを生み出すことができるはずだ。しかし、決して競合の模倣になってはいけない。共通点を探す中で、自社サイト固有の価値を作り出す切り口を考える必要がある。
ページの構成として、いきなり重い内容を書くことは、ユーザーの離脱の可能性を高めると考えられる。初めは、結論やベネフィットをわかりやすく伝えることに専念し、詳しい理由や事例などはできるだけ後半に回すのが良い。取っ付きやすい内容を前半に持ってくることで、読み進めてもらい、できるだけ多くの読者を後半の詳細部分に導くことができるはずだ。
ページの構成を決めるときに、それぞれの項目の分量と全体の分量を大まかに設定しておくと書きやすくなるだろう。もちろん、ライティングの過程でこの分量より増えたり、減ったりすること自体は、全く問題ない。
始めに分量を決めておくことのメリットは二つある。一つ目は、書くべき内容を取捨選択できるということだ。当初の予想を大幅に超えた分量になってしまう場合、些末な部分を消したり、冗長な表現をコンパクトにしたりといった調整ができる。
二つ目は、文章のタッチを決めることができるということだ。1000文字程度の記事と数ページにわたる記事とは、書き手のスタンスが異なってくるだろう。ユーザーのニーズによって、分量を少なくし、読みやすさ重視にする。あるいは、分量を増やして、詳細まで述べるといったことをあらかじめ決めておくと、スムーズに記事を作成できるようになるだろう。
構成を考える段階で、構造化を意識することで、論理的で理解しやすいコンテンツを作成することができる。まず、ユーザーに向けて提供するべき情報を書き出し、次に、それらの情報のつながりを何層かに分けて整理する。そうすることで、読み手が読みやすく、書き手も書きやすくなる。
例えば、「ライティングのコツ」という記事を書いているとする。書くべき情報として、「タイトルは32文字以内」「タイトルに具体的な数字を入れる」「書き出しは意表を突く」「本文は3,4行で改行」「初めに結論を述べる」などを挙げたとする。
このような場合、以下のように構造化してからライティングに移れると良いだろう。
⑴項目別
⑵目的別
このようなイメージを持っているだけで、ただ闇雲に書き進めるよりも、はるかに論理立てて、内容をまとめることができるはずだ。また、構造化することによって、全体の分量の目安に合わせて、それぞれの項目に割くべき文字数や時間が大体見えてくるというメリットもある。見出しをただ単に並べるだけではなく、「構造化」を意識することで、頭を整理して、伝えたいことを分かりやすく伝えることができる。
タイトルで「これだけ読めば十分だ」と思わせることが、クリック率に大きく影響してくるのではないか。例えば、「大全」「全集」「完全版」「網羅」などの言葉を入れることで、検索順位が1位ではなくても、ユーザーの目に留まり、クリックしてくれる確率が上がると思われる。
ネットユーザーの多くは、検索することで早く、簡単に十分な情報を得たいと思っている。そのようなニーズを持ったユーザーにとっては、一つのページですべて解決できるような記事を選択するのが最もラクなのだ。
例えば、あなたが、1時間後に目上の人とフレンチレストランでの会食を控えていて、今すぐにも食事の作法を知りたいとき、次のどっちのサイトをクリックするだろうか。
・「フレンチのテーブルマナー 5選」
・「【完全版】フレンチで恥をかかない!必須作法5つを網羅!」
この例の状況であれば、ほとんどの人が下のサイトを選ぶのではないだろうか。理由は「これだけで済む」と思うからだ。
注意点としては、全てのコンテンツにこのようなタイトルが適しているというわけではないということが言える。上の例のように、網羅性が重要になってくることもあれば、ある程度厳選した方が、サイトに訪れやすい類のものもある。
使い分けの基準は、「ユーザーが何を求めているか」に尽きるだろう。テーブルマナーを知りたい人は、漏れなくすべてを知っておきたいと思うだろう。例えば、大学受験の参考書を紹介する記事ならば、ユーザーが「勉強を始めたてだから幅広く知りたい」と思っているのか、「浪人生で、厳選された質の高いものだけ知りたい」と思っているのかという違いを見極めていく必要があるだろう。
カタカナは、漢字の「硬さ」「誠実さ」やひらがなの「やわらかさ」「親しみやすさ」とは異なるイメージを与えることができる。カタカナを効果的に配置すれば、「リズム感」が生まれる。例えば、以下のどちらが、より惹かれるタイトルだろうか。
・「現代人が悩む携帯依存症とその解決策」
・「令和の必需品、ケータイの光と闇」
パッと見て、後者の方がタイトルとして魅力的ではないだろうか。*カタカナには、「外国・冷たい・気取った・モダン・おしゃれ・鋭角的」といったイメージがあり、「意味深さ」を加えることができる。漢字は、字が持つストレートな意味を表し、ひらがなは、特に意味を持たない。一方、カタカナは文字自体に意味はなくとも、独自の意味を醸し出すことができる。
しかし、一般的ではないカタカナを使いすぎることは、逆効果になる場合もある。例えば、「イニシアチブ」や「コンピタンス」といった言葉のように、ビジネスでは使用しても、日常的に使用しない外来語は、読者が離れる原因になる可能性がある。
*奥垣内健. (2010). カタカナ表記語の意昧についての一考察: 身体性とイメージの観点から. 言語科学論集= Papers in linguistic science, 16, 79-92.
リード文では、結論や要約といった記事の中心となる部分を書く必要がある。答えをすぐ知りたいユーザーがほとんどだからだ。リード文が、ただ内容の薄い導入になってしまうと、答えを求めるユーザーは、すぐに離脱してしまう。コンテンツマーケティングでは、読み手を書き出しで離脱させず、本文の内容を読んでもらって、CTAにつなげるのが、実利的な目的である。
そこで考えるべきは、リード文で書くことと書かないことのバランスだ。「リード文で離脱させない」ということと、「リード文だけで満足させない」ということを、両立させる必要があるのだ。そのため、要点が分かる、かつ、後が気になるリード文にしなければならない。
テクニックとしては以下のことが、効果的なのではないか。
⑴本文を読まないと、ベネフィットが得られないことを伝える。
⑵リード文で意表を突いたり、驚きを与えたりすることで本文への期待を膨らませる。
⑶リード文では、最重要ポイントだけを述べ、他は濁す。
⑷ユーザーにとって興味深い事例を後半に置く。
リード文では、正しい情報を印象的に伝えなければならない。これが守られないと、ページ、筆者、企業の信頼を損なうことになる。ファクト(客観的事実)とオピニオン(主観的意見)をしっかりと区別することが、重要である。この二つの違いが曖昧だと、ユーザーに価値を正しく届けることができない。
例として、以下のような場合を考えよう。
・ファクト:野球人口の減少
・オピニオン:少子化が原因
もし、このファクトとオピニオンの区別を意識せずに文章を書くと、次のようになってしまうことがある。
「近年、野球人口が減少していると感じる。その最大の原因は、スター選手の不在やサッカー人気ではなく、少子化なのだ」
リード文で書かれていることを前提に、そのあとを読み進めていくことを考えれば、主観と客観の混同は、読み手の大きな誤解を招く恐れがある。一度書いた文を、自分で読み直して、主観をあたかも客観的事実のように述べていないか、客観的事実を主観的に語っていないか確認するべきだ。上の2文は、以下のように書き直すと良いだろう。
「全日本野球協会によると、日本の野球人口は、10年前に比べて、○○万人減少している。この主な原因は、少子化だと私は考える」
ベネフィットは、メリットではない。そのページを読む「利点」ではなく、読むことで受ける「恩恵」である。メリットだけを述べるのではなく、ベネフィットを訴えることで、リード文から本文への誘導をすることができる。本文やまとめの部分でもこの二つの言葉の違いを認識して、使い分けることが望ましいだろう。
では、ベネフィットとメリットの違いは、具体的にどう理解すればよいのか。例えば、先ほど挙げたフレンチのテーブルマナーについての記事を書いているとしよう。この記事を読むユーザーのメリットは、「テーブルマナーを学べる」ということである。ベネフィットは、ここから一歩踏み込んだ魅力を伝える。「上司に一目置かれる」や「異性に好意を持たれる」といった表現をすることで、読み手が当事者意識を持ち、記事に興味を引かれるのだ。リード文では、ユーザーに合わせて、どういうベネフィットを訴えればよいかを吟味し、読後の恩恵を期待させるということを意識するべきだろう。
サイトに訪れる人が皆、自分と同じように知識を持っているわけではない。重要な言葉の定義や前提知識の確認をきちんと行い、すべてのユーザー層に配慮のある文章を書くべきだ。読み手と書き手の共通認識を大事にして、思いやりのある文章を書くと良いだろう。あまり知識のない人を、決して置き去りにしてはいけない。
ライターは、画面の向こう側にいるとはいえ、一人の人である。無機質な文章ではなく、ライターの個性、企業の個性を出すことで、ユーザーにとってより魅力的なコンテンツに仕上げることができるだろう。例えば、ライターの体験談や、企業の失敗エピソードなどを交えると、親近感が湧く、人間味のある文章になるだろう。ただ、あまり個人的な内容に偏ってしまうと、かえって記事の質を下げることになってしまう。客観的に信頼できる情報に加えるスパイスとして活用することで、文章全体として良い味が出るはずだ。
先程私は、論文を参照して、主張を述べた部分がある。文章の信頼性は、検索エンジンのアルゴリズム上も大切だが、読者に対して大きな心理的効果を発揮する。周知の通り、ネット上の記事は、根拠が薄く、質が悪いものが非常に多い。完全に信頼できる記事の方が、少ないと言っても過言ではない。もちろん、読者もそれは分かった上で、記事を閲覧しているため、有名な学者の論文や政府機関の調査を元に議論することによって、読者にポジティブなイメージを与えることが可能になる。
記事の最後のまとめの部分では、「これだけ」を理解してもらえたら、ユーザーに価値を提供したことになる、と思うところを抽出して伝えると良いだろう。私がこう思う理由は二つある。一つ目は、結論だけを手早く知りたいというユーザーは、まとめを最初に見るということだ。このような場合、まとめへの評価が、ページへの評価に直結する。まとめに最重要ポイントを分かりやすく書くことで、記事に好意を持ってもらうことができ、本文を読むに至ることもあるはずだ。
二つ目は、上から順番にページを閲覧する場合、構成上ユーザーにとって最も読みやすい形になっているということである。PREP法と呼ばれる手法に則り、「要点⇒理由⇒例⇒要点」という文章構成にすることで、読み手にとって分かりやすくなる。このモデルは、記事の中の一つのトピックの中でも活用できるが、文章全体で大きくこの流れを作ることも効果的だと考える。まずは、リード文で要点を簡単に述べる。次に本文で根拠と具体例を出す。そして、最後のまとめでもう一度要点を述べる。この流れによって、ユーザーは、読み進めていく中で、自然に納得感を感じることができるはずだ。
ライティングの推敲に関しては、大きく二つのやり方がある。一つは、文章を書きながら、適宜修正していくというやり方である。もう一つは、一通り文章を書いてから、後で修正するというやり方である。私は、二つの理由で、後者のやり方を強く薦める。
一つ目の理由は、ある程度時間が経ってから見直さないと、自分のミスに気付きにくいということだ。これは、恐らく多くの人が感じたことがあるだろう。レポートやエントリーシートなど、自分が書いた文章を次の日に見たら、全く印象が変わっている。恐らく、誰しもこのような経験をしたことがあるのではないだろうか。特に、集中して書いたものであればあるほど、書いている間は俯瞰的に自分の文章を見ることが難しい。
二つ目の理由は、書くことと、直すことを分けて行った方が、効率が良いということだ。細かい表現のミスや冗長で読みにくい文を、いちいち気にするのではなく、まずは、形がどうであれ、書き切る。その後、客観的に読んでみて、自分の文章に手を入れていく。こうすることで、一つのことに注力でき、作業効率が大幅に上がる。
フランスの著名な文化人類学者レヴィ=ストロースは、この二つの作業に対する向き合い方をそれぞれ、「画家」と「細工師」と表現した。自分の中で、「画家」として書く時間と、「細工師」として推敲する時間を分け、役割分担をすることでライティングの効率化を図ることができる。
(参考)https://readingmonkey.blog.fc2.com/blog-entry-461.html
時間を置いてから見直すことが、重要だということは上で述べたとおりである。では、文章の初めから一文字一文字、丁寧に見ていくべきなのだろうか。私は、大まかな視点から、だんだん細かい視点に落としていくという手法が良いと考える。
具体的には、1ページ⇒1項目⇒1段落⇒1文⇒1単語というような流れである。まずは、ページ全体を見て、だれが読んでも分かりやすい構成になっているかを確認する。その次は、見出しごとに分量は適切か、表やグラフは有効に使えているかなどを見ていく。そこから、段落ごと、文ごと、単語ごとといった感じで細かいところにズームしていく。この大から小への流れは、先程の役割分担の話に似ている。大きな視点と小さな視点を同時に持っていると、どちらかが疎かになってしまう可能性がある。そのため、「今は大局を見る戦略家だ」「今度は顕微鏡を覗いて言葉の細かい表現に注目しよう」というように役割を変えながら、今の自分の仕事を全うすることで効率性と正確性を高めることができるはずだ。
Webライティングの大きな特徴の一つは、公開後に修正ができるということだ。もちろん、文章自体に欠陥がある状態で、世の中に公開することはあってはならない。ただ、現時点で正しい内容でも、長い間ネットに公開していると、いずれそれが古い情報になってしまう。
ユーザーにとっては、情報の新鮮さが信頼性に大きく関わる。公開したら仕事が終わるわけではない。新しい、正確な情報が、その記事に訪れたユーザーの求める価値になる。Webライティングの世界では、書いたら終わりではないということを覚えておこう。
本記事では、既に基礎を押さえているライターが、ライティングをさらに上達させるための工夫を、筆者が可能な限り網羅的に解説した。私が説明した内容の中には、これまであなたが意識していなかったことがあったかもしれない。この記事の内容を取り入れて、これからも「ユーザーに最高の価値を届ける」記事を書いていただきたい。